NATURAL

News Letter No.124

2018.07.17

「最強の野菜スープ」

著:前田浩抗

 
がん剤の研究でノーベル賞候補にも名が挙がる研究者熊本大学名誉教授前田浩先生の著書を今回はご紹介させて頂きたいと思います。

野菜スープは猛毒の活性酸素を消去する物質の宝庫

がんをはじめ、ほとんどの病気や老化に密接にかかわっているのが、猛毒の「活性酸素」です。活性酸素とは、通常の酸素が変質したもので、激しく活性化し、他の物質を攻撃します。この作用を「酸化」といいます。鉄が錆びるのも酸化で、活性酸素のしわざです。この状態が人体でもおきるのです。活性酸素は、紫外線や放射線、科学物質、呼吸で取り入れた酸素やタバコ、食品添加物など、あらゆるものから発生して、細胞や遺伝子を攻撃します。がんは、遺伝子が活性酸素によって損傷されて、細胞が突然変異を起こし、段階を経て成長したものです。がんが発生するすべての段階に活性酸素が関わっています。私達は生きている限り、活性酸素の攻撃から逃げられません。しかし、活性酸素を抑える方法はあります。それは、野菜を食べることです。野菜には、活性酸素を消去する働きをする物質が多量に含まれています。これを「抗酸化物質」といいます。野菜は抗酸化物質の宝庫です。野菜をたっぷり食べ、体内に抗酸化物質を取り込んでおけば、活性酸素を撃退し、がんを予防することができます。私は、野菜の抗酸化物質を用いて、さまざまな実験を行いました。その結果、野菜は煮てスープにすることで、最強の抗酸化パワーを発揮することがわかりました。猛毒の活性酸素も、野菜スープを加えると一瞬で消去されてしまうのです。野菜に含まれる各種の抗酸化物質が連携して害を防ぐ野菜に含まれる抗酸化物質には、様々な種類があります。代表格はファイトケミカルです。ファイトケミカルは、植物が紫外線や害虫などから、自らを防衛するために作り出す物質の総称で、植物の色素や香り、苦味などを構成している成分です。トマトのリコピン、ホウレンソウのルティン、ニンジンやカボチャのカロテノイド、大豆のイソフラボン、緑茶のカテキン、タマネギのケルセチンなど、ファイトケミカルは身近な野菜や果物、豆類、お茶にたっぷり含まれています。ファイトケミカルの種類は1万種以上にのぼり、それぞれ多様な働きをします。がんに対しては、①遺伝子を傷つける活性酸素を消去する、②発ガン物質を解毒する、③がん細胞の成長・増殖を抑える④免疫力を強化する、などが挙げられます。野菜は他にも、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類、グルタチオンなど多種類の抗酸化物質が含まれています。これらが連携して、活性酸素を消去してくれるのです。活性酸素は、ガンだけでなく、老化や動脈硬化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣、アレルギー疾患、アルツハイマーなど多くの病気の原因でもあります。

 

とら食堂

こんなごはん、あんなおやつ、皆さまのおすすめレシピも教えて下さいね。

 
夏の野菜スープ

 
材料
タマネギ、ニンジン、キャベツ、カボチャ…合わせて100g
トマト…1個(200g)
水…900ml

 
作り方
①野菜は良く洗っておく。
②タマネギは皮をむき、一口大に切る。ニンジンは皮をむかずに、一口大に切る。キャベツはざく切りにする。カボチャは種のみを取り除き、一口大に切る。トマトはヘタを取り除き、ざく切りにする。
③鍋に②の野菜と水を入れ、蓋をして火にかける。沸騰する直前に火を弱め30分、野菜が柔らかくなるまで煮る。
④ポタージュにする場合、③のスープが冷めてから、ミキサーかハンドブレーダーで撹拌する。
「最強の野菜スープ」より

 

なかがわ耳鼻咽喉科 院長福元晃先生のコラム

 
剣道難聴

 
剣道難聴という言葉をご存知でしょうか?日本の伝統的な武道である剣道が難聴の原因になることがあります。はじめは、長年剣道を行っている高齢の剣道家に難聴者が多いのではないかということから研究が始まったのですが(1)、今では若い方でも難聴が起こることがわかってきています。剣道難聴の特徴は2000-8000Hzという高い音が聞こえなくなるということと、また左耳がより悪くなるということです。剣道難聴の原因として道場内の騒音、面を受けたときの竹刀の打撃音、頭部打撃から耳へ伝わる衝撃などが考えられています(2)。面を受けたときの竹刀の打撃音は個人差はあるものの110-120dBとされ、これは飛行場の騒音に相当します。左耳がより悪くなるのも、左側に打撃を受ける回数が多く、打撃を受ける力も右側より強いためではないかと考えられています。ある高校剣道部では18年間聴覚検診を続けたことで聴覚障害を減らすことができたそうです(初年度33名中10名、30.3%から、最終年度31名中3名、9.7%へ)(3)。そのポイントは、聴覚健診の結果を部員と顧問の先生、指導の先生に伝え、聞こえが悪くなった時、耳鳴りがしたり、耳が詰まったような感じがしたときには部活を休む、剣道場以外ではヘッドフォンなどから強い音を聞かない、指導と称して決して側頭部(頭の横)を竹刀で打たないということだそうです。難聴が生じたときにはステロイドというお薬を使ったり、しばらく稽古を中止し耳を休めるだけでも回復する場合があり、早めの対応で進行を防げる可能性があります。難聴を自覚したらもちろんのこと、剣道をされているようなら1度耳鼻科を受診して頂いた方が良いかもしれません。

1) 堀川 健治 他. 剣道難聴の研究. 体育学研究1988;33:175-83.2) 高橋 美香 他. 剣道によると思われた難聴の臨床的検討と発症機序に関する考察. Otol JPN2006;16:178-182.3) 加藤 榮司 他. 剣道による聴覚障害. 日耳鼻2012;115:842-848.